カカオとろけるテリーヌショコラ
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dari K to the World
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セブン-イレブンでの販売に至った理由

2021年1月26日(火)に、Dari Kの「シトラスカカオ」チョコレートドリンクが一都三県(東京、神奈川、埼玉、千葉)にて販売開始されました。また明日2月2日(火)からは「トロピカルカカオ」チョコレートドリンクが中部以西で販売されます。

カカオドリンクバナー_1_26用_V2

また1月31日(日)からは、下記3品のチョコレートが全国で販売開始となりました。

セブンチョコ

トロピカルチョコシトラスチョコ

チョコアソート

Dari Kがコンビニで商品を販売するのは、設立から10年経つ今年が初めてです。

今回、コンビニでDari Kのチョコレート&チョコドリンクの発表を受け、「コンビニでダリケーの商品が買える!」と嬉しく受け止めてくれる人、「なんでコンビニで販売することにしたの?」と純粋に疑問に思う人、「コンビニで商品を売って欲しくなかったのに・・・」とちょっとがっかりした人など、いろいろいらっしゃると思います。

かくいうDari K社内でも、正直なところコンビニで商品を出すべきかどうかに関しては当初様々な意見が出ました。しかし、Dari Kの存在理由を突き詰めていくと、意見は完全に一致。

今日は、なぜ今回セブン-イレブンさんで販売することになったのか、その決断に至る理由を綴っていきたいと思います。

まず、そもそもですが、2011年に創業したDari Kのミッションをご存知でしょうか?

それは、ちょっと大口叩きますが「カカオを通して世界を変える」ことです。Dari Kが目指すのは「生産者の努力が報われる(=生産物の価値が正当に評価される)社会の実現」であり、今の世界(=生産者の努力が報われない状況)を打破したいと思っています。

文章で書くと難しく感じますが、私が感じている今のカカオを取り巻く世界の違和感は、具体的に次のようなことです。

・頑張って高品質なカカオ豆を作っても、庭でテキトーに栽培したカカオ豆も、同じ価格で買い取られるっておかしくない?(マジメに仕事する人が馬鹿を見る世界でいいの?)

・そもそもカカオ豆の価格を決めるのが、カカオを育てた生産者ではなく、カカオ豆を買い取るバイヤーでもなく、ニューヨークやロンドンの国際相場で決まるのっておかしくない?(あなたの成績や給料が全く会ったこともない人がサイコロ振って決めてたら、どう思う?)

・一生懸命カカオを育てたのに、気候変動の影響で開花のタイミングが遅れ、結実(受粉して実をつける)の確率が下がり、収穫量が減ったのに、その分カカオの保障がないっておかしくない?(地震や台風で被害受けたら被災地支援っていってみんな寄付するのに、ニュースにならない自然災害や気候変動にはお構いなしって、それでいいの?)

・消費者に少しでも安心で安全なカカオを届けようと、殺虫剤や農薬の使用を控えた結果、病害虫にやられて収量が少なくなったことに対し、そういう大変な責任は全部生産者が負って、消費者はやれ残留農薬が問題だの、化成品を使うなだの、消費者は主張はするけど責任は一切とらないのっておかしくない?(これも正直者が馬鹿を見る世界だよね?)

・カカオの産地で児童労働や強制労働が問題とかいうけど、それらを無くすために生産者のモラルを上げようというのは本質ではなくない?だって、ちゃんと大人を雇ってカカオ生産で生計が安定するなら、だれも好き好んで子どもを働かせないよね?頑張って働いても生活していけないレベルの収入になってしまうから、児童労働が起こるんじゃない?(安いは正義かもしれないけど、過剰な安さは誰かにしわ寄せいってることになるよ?)

読んでいて気付いた人もいるかもしれないですが、これ、カカオに限ったことではないです。コーヒーやコメなどの農家は、程度の差こそあれ同じような境遇にあっていると思うし、農家だけでなく漁師など、いわゆる第一次産業(農林水産業)に従事している人は、このような環境に近いと思います。

もちろん、例えばコメであれば品質によって、あるいは品種や栽培地域によって、ある程度、価値が価格に反映されてますよね(魚沼産コシヒカリは高いとか)。でも、カカオはそうではありません。とりわけインドネシアは、ガーナやエクアドルなどの産地と異なり、ただでさえカカオ豆の価格はニューヨークやロンドンの国際相場で決まるのに、その相場からさらにディスカウントされて(割り引かれて)取引されているのが現状です。

なぜディスカウントされているか?それはインドネシアのカカオは、高品質な、つまり香り高く風味が良いチョコレートを作るのに必要な「発酵」の工程を経ないケースが極めて多いからです。「発酵していない=品質が悪い=ディスカウント」こういうことですね。

でもですよ!

インドネシアのカカオ農家の中には、ちゃんと発酵させて良い品質のカカオを作りたいと思ってる、気合の入った農家だっているんですよ。でも、どんなに頑張っても、未発酵の豆と変わらない金額で買い取られてしまう。そんな状況に身を置かれたら、みんなやる気なくなっちゃうと思いませんか?

テストで100点とっても、0点でも、期末の成績は同じだとしたら?それでもみんなテスト勉強しますか?頑張って営業成績1位をとっても、サボってばかりいて営業成績ビリでも、給料が同じだったら?それでもあなたは毎日汗水たらして営業に行きますか?

やっぱり努力が報われる世の中にしないといけないです。そうじゃないと、正直者が馬鹿を見る。頑張る人がいなくなる。そしたら社会は、終わります。

めちゃくちゃ前置きが長くなったけど、Dari Kがなぜカカオにコミットしているか、なぜインドネシアのカカオにこだわるか、クリアになったと思います。

話を戻して、なぜコンビニで展開するか。

それは、上記の「カカオを通して世界を変える」というミッションを達成するためには、小さくまとまっていてはダメだからです。

Dari Kは創業から今年3月で10年になります。この10年間は、ただただインドネシア産のカカオを、発酵により品質を上げることにひたむきに取り組んできました。そしてそのカカオ豆を使って、チョコレートを作り、自社店舗で販売する。要はチョコレートの専門店として展開してきました。

しかし、コモディティとしてのカカオの世界観を変えるには、もっともっとスケール化しないといけません。今すでにインドネシアには500人に上る契約農家がいますが、Dari Kと取引して、頑張って良いカカオを作り、収入を上げたいと思っている、やる気に満ちた農家は数千人いるんです。みんな待っているんです。頑張った努力が報われる、そんな当たり前の取引を。そのためにも、ダリケーもっと頑張ってくれと(笑)。

だから私の頭の中では長年、いつかコンビニでDari Kのチョコを展開したいと思ってきました。しかし、単に「Dari K監修」のチョコを売ることは毛頭考えていませんでした。私たちはブランドを売ってロイヤルティで稼ぐことに興味はありません。

私たちが興味あるのは、Dari Kが契約農家さんたちから仕入れたカカオの流通量を増やすこと。そのためには、コンビニ向け商品の開発には1つの大きな前提がありました。

それはDari Kのチョコを100%使うこと。

これは、おそらく他のシェフが出しているチョコレート商品と最大の違いだと思います。シェフが監修するチョコレートは(チョコに限らずだと思いますが)、シェフのこれまでの知見と技術力により、コンビニで販売できる手ごろな価格で、一流に近い出来るだけおいしいものを作ることが最重要。

一方で、Dari Kはブランド名を冠してロイヤルティを上げたいのではなく、自社カカオで作ったチョコレートの流通量を増やすことが最重要命題だから、自然とアプローチは「材料の差別化」に寄らざるを得ません。

シェフの強みは技術と経験に裏打ちされた材料の組み合わせ(レシピ)。Dari Kの強みは、そもそも原材料(素材)を作りこむことができること。だからDari Kが手掛ける商品は、原料ラベルを見ると、まあ少ないことに驚かれると思います。

コンビニで販売するには、誰もやっていない、そして誰もできないことをしないといけない。そこで、4年の歳月をかけて試行錯誤を繰り返し、ようやく完成した“フルーツ発酵”のチョコレートを今回、満を持してコンビニで出すことにしました。

発酵しておらず低品質なレッテルを貼られているインドネシアから、通常の発酵どころか、さらに何倍も付加価値を創出したフルーツ発酵のカカオで世間を驚かしたいと、何度も何度も実験を繰り返したこの4年。ようやくDari K10周年の今年、僕らの夢を乗せたチョコレートがコンビニの力を借りて全国へお届けできるようになったのです。(この“フルーツ発酵”にかける想いは渾身のブログ「フルーツ発酵」について語りますをご覧ください!)

最後に、なぜコンビニの中でもセブン-イレブンさんを選んだのか?について。そもそも、Dari Kはどのコンビニチェーンで展開するか全くもって選べる立場にあるわけではないのですが(笑)、答えは至ってシンプル。バイヤーさん・マネージャーさんの知識と熱意、そして日本の小売の将来を真剣に考える姿勢に心を打たれたから。僭越ながら、Dari Kが頑張ることで、その1ミリでも貢献できたらと思ったのです。

商談において、「今年のトレンドはこうだから、どんな商品を出したら売れそう」とかいう話は微塵も出ませんでした。もはやそういう次元では全くなかったです。むしろ、5年後、10年後、セブンさんとしては、日本をこういう社会にしていきたい。そのためには、小売業は、コンビニは、こんな役割を果たさないといけない。そう考えると、商品はこうあるべきで、接客はこうあるべきで、お客さんにはこういうサービスを提供する必要があり・・・要するに、「実現したい未来」から「今すべきこと」を逆算して考える完全にバックキャスティング思考をセブンさんはしておられたわけです。いやーシビれました。世界的にもバックキャスティング思考の重要性は叫ばれていますが、まさに実践されておられるのですから。

だから、Dari Kもフェアトレード認証をつけて、エシカル商品だからお客様に買ってほしいなんて考えない。セブン-イレブンさんで販売するDari Kの商品は「フェアトレード」と謳っていません。それは付加価値ではなく当たり前だから。おいしいから、好きだから買って食べてもらいたい。結果的にそれが生産者や環境に貢献してた。このブログでは、Dari Kのソーシャルな面を沢山書いていますが、行きつく先はこれだと思っています。「おいしいから、好きだから買った。そしたら社会にも貢献してた」名付けて無意識的社会貢献型商品(長すぎ><)。

こんな商品が増えれば、世界は確実に変わります。

そしてそんな商品の1つとして、Dari Kのチョコレートが全国のセブン-イレブンさんを通して皆様の手にわたることを祈っています。