未曾有の円高

| 2011.8.10

円高で1ドル80円台になって久しいですが、
最近では70円台に突入、政府の介入があったものの
他国との協調介入でなく単独介入であったため、
その効果は一時的なもので、ドル円相場は今現在
76円台になっています。
よくTVで円高の私たちの生活への影響について
街の人々にインタビューしたり、コメンテーターが
解説をしていますが、円高のメリットで挙げられる
「海外旅行に有利」とか「輸入原価が低くなる」というもの。
確かに円高のメリットではありますが、
円高だからって海外旅行に行こうとはならないですよね。
たまたま海外旅行に行く予定があって円高で
ラッキー、というくらいでしょう。
またドルやユーロなど外貨建てで輸入しているものは
確かに円高により実質的な調達費用は安くなるものの
小売価格に占める原価の割合なんてたかが知れています。
たとえば1本3000円で売っているフランスのワイン。
この3000円の内訳は、「現地のワインの価格+輸送コスト
+関税+酒税+消費税+輸入業者の利益+小売業者の利益」
だと思われますので、逆算すると実際現地で7-8ユーロの
ワインだったりするんですよね。
1ユーロが110~120円なので、仮に10%の
円高になったとして、ワインの価格や輸送コストが
外貨建てだとしても、おそらく原価への影響は
100円安くなる程度です。
もちろん100円でも、大きなロットで輸入していれば
全体では大幅な原価安メリットではありますが、
円高が1割進行することの影響を少し掘り下げて
考えてみましょう。
日本は人口が既に減少し、所得水準も増えず、デフレで
消費市場自体が良くて横ばい、だいたい縮小しているのが
現状。そんな中海外に販路を見出す企業が、新興国を含め
海外で利益を稼いで日本の国内市場の縮小からくる減益分を
補い、さらに利益を伸ばすというのが今の日本企業の戦略であり
構造です。
円高が進行した場合、日本の輸出製品の競争力が海外のマーケットでは
価格面でその分落ちるだけでなく、これまで蓄積した外貨建て利益を
円に換算することで、利益の目減りも発生するというダブルな
ダメージになります(まあこれに関しては実際に円に転換しなければ
損は出ないので、未実現ではありますが)
1円の円高で営業利益が吹っ飛ぶ(たとえばトヨタは1円の
円高で300億円利益が飛びます。しかもこれは原料安メリットを
考慮したあとの数字!)ことを考えると、10円、あるいは
1割の円高の進行がいかに企業の収益、それも日本の市場では
成長できないからと海外市場を成長ドライバーとしている
日本を牽引する優良な企業に打撃を与えるか分かるはずです。
そうした企業の利益が円高で悪影響を受けると
株式市場では株価は当然下がります。一方、税収面では企業の
利益が減るから収める法人税も減り、つまり政府の税収・予算は
一層厳しくなるということです。
さらに企業の採算悪化は従業員の給与・ボーナスの減少を招き、
つまりはサラリーマン世帯の家計も悪化。民間企業にあわせる
プレッシャーをかけられる公務員の給与も削減の方向に。
そして家計は消費を控えるようになるという流れに。
消費を控えるからこそ、円高メリットだからといって
海外旅行になんて円高だけを理由に行く気にはならない。
よって円高のメリットって、きっと冷静に考えると
デメリットの方が大きすぎて、あまりないんですよね。
そして今回のアメリカの格下げやデフォルト危機の事態が収拾し、
10年とか20年とか長い目で見れば、(というか市場が
落ち着きを取り戻し、冷静に日本の経済力が為替に
反映されるようになれば)円安の方向に向かうはずです。
そのタイミングはいつかはわかりませんが、そういう流れに
なるのだとしたら今はどういう行動をすべきか、そういう
方向で議論したいですね。
私にとっては、為替に左右されすぎない収入体制をインドネシアの
農家のために築くこと、換言すれば、為替のしわ寄せを生産者に
受けさせない仕組み作りを、これから考えていかねばならないと
思いました。