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ミンダナオ出張記(3)

さてさて、ミンダナオでのカカオ栽培の可能性と、それによりもたらされる雇用創出効果、所得向上規模、その前提条件の洗い出しや、私が大事にしている「現地の人の声」の調査が始まりました。

途上国に行くと、意識せずとも「(日本人である)自分たちが上」というモードに入ることは決して少なくありません。実際に現地の物価は日本と比較すれば非常に安いし、インフラも整っていないし、そもそも日本と同じ時間が流れているとは思えないのが現状でしょう。

タイのプーケットやインドネシアのバリ、フィリピンのセブなどアジアのビーチリゾートが人気なのは、ずばり「物価の安さ」と「ゆったり流れる時間」だからだと思いますが、それは休日を過ごすのには良いものの、開発問題を考えるときには大きな障害になります。

どういうことかと言うと、そもそも「現地で我々が何かをしてあげよう」「自分たちにはこういう貢献ができるはず」というアプローチをとるか、「そもそも現地の人は何に困っているんだ?困っていることは何か探ることからはじめよう」というアプローチは、そのプロセスにも結果に大きな違いをもたらします。

なんというか、前者は『自分たち➡現地の人=課題解決』という矢印が存在するのですが、後者は『現地の人&自分たち=課題解決』ということなんです、要するに。この辺は、インドネシア駐在員Mayaが先日書いたブログ「Dari Kで働く理由???」でも少し触れられていましたので、是非ご覧ください➡Mayaブログ

話を戻して、ミンダナオの地主や小作人に話を聞いて回るうちに、多くの人が口を揃えて言う共通事項がありました。それは「結局、農家は生産した農作物のマーケット(売り先、つまり買い手・バイヤー)がないと生産したくない」ということです。

そりゃそうでしょうよ。せっかく作っても誰も買ってくれなかったら意味ないじゃん!!!!よ~く分かるよ、農家さん。

日本人だって、数学や英語は入試の必須科目だからみんな必死こいて勉強するけど、もし入試の科目にそれらが入らず、代わりに中国語と家庭科が必須科目になったら、みんな必死で「ニーハオ」勉強して、裁縫や料理するでしょうよ。世の中そんなもんだよ。分かってるよ、農家さん!安心してくれ!

冗談はさておき、「売り先が確定していないのに生産する」ということはどう考えても「リスク」なわけです。そしてそれが米やトウモロコシならまだいいんです。それらは自家消費できるし、すぐに腐るわけではないから、乾燥させて保存できるし。しかし、それがcash crop、つまり「換金作物」となると話は変わってきます。リスクはただのリスクではなく、とんでもなく大きな「Loss(損失)」になります。

売れないから収入がゼロでしたでは済まされない。収穫までにインプットした苗代、肥料代、労働力、それら全部考えなければいけないので、収支はゼロではなく大幅なマイナス、つまり赤字なわけです。

しかもここはミンダナオ。苗や肥料代はお金を借り入れているケースがほとんど。単に貯金が減ってしまったとはいかず、高い利率の借金が残るわけです。

お分かりですね。生産者は今育てていない作物を育てるのは「ものすご~~~く怖い」んです。いくらカカオに可能性があろうと、それをどれだけ数字で裏付けをとって、シミュレーションして、苗木代がいくらで肥料がいくらで、これだけお金がかかるけど、3年後から収穫するとこれだけの収入になるから、そこから費用をひいたら利益はこれだけで・・・・そんなこと農家にとっては、どうでもいいんですよ。

要は「自分が作ったものを買ってくれる奴がいるのかいないのか?」以上。

さあ、そうしたら買い手、つまりバイヤーの重要性もお分かりいただけると思います。国際機関や開発コンサルはシナリオは書けても実際にバイヤーにはなってくれないので、保証をしてはくれません。ライ○ップみたいに結果にコミットして返金とかないから(笑

じゃあ、バイヤーを見つければいいじゃん。そう思うあなた。これまた「言うは易し、行うは難し」(英語では“Easier said than done”ですよ、試験に出るかもしれないから受験生は覚えておいて!)

だって、考えてもみてくださいよ。たとえば、あなたの前に全く面識のない高校卒業したての坊やがやってきてこう言うんです。

「僕は将来、絶対に三ツ星レストランのシェフになります!3年後には独立してフルコース振る舞うので、その時に使えるフルコース1名様分のお食事券を5万円で今買ってください!」

ハイ、あなた、その食事券買いますか?

「おいおい、待てよ君。そんなのは独立して三ツ星レストランをオープンしてから言ったまえ」
となるでしょう、普通。

でも、もしその坊やが
「今食事券買ってくれないなら、僕はもうシェフになんかなりません!修行もしないし、普通に大学にでも行きますわ」
と言ったらどうします?

「バカヤロー、一流の料理人になってから大口叩きやがれ!腕があるかどうかもわかんない奴に金なんか払えるか!」
となりますよね、普通(*言葉遣いについては個人差がございます)

つまりですね、回りくどくなってしまったけど、バイヤー(買い手)というのは、既にそこに商品なりモノがないと、買うかどうかなんてそもそも判断できないんですよ。何もやったこともない奴に、これからやるから出来たら買うって約束してね、って言われてOKするバイヤーなんかいないし、いたとしたらとんでもないリスクテイカーというか、むしろどうしようもないおバカさんなわけです。

これまでの国際援助や農村開発でよく行われてきたのは、例えば、ここの土地は標高が高いからコーヒーが栽培できるはずだ。コーヒーはお土産にもなるし、地域産品としてコーヒーの生産を奨励する。技術援助やトレーニング(いわゆる「キャパシティービルディング(通称キャパビル)」)をして生産の指導をするので、農家の皆さん、一緒に頑張りましょう!なんていうハナシ。

さて2~3年後。何が起こるか?コーヒーは無事収穫できました。しか~~~し!売り先がありません。だって、そのコーヒー、思っていたのと違ってクセがあって、美味しくなかったんだもん!

あるいは何とかバイヤーが見つかりました~~!よかったね~!パチパチパチ!
しか~~~し!価格が想定していたのとだいぶ違って、と~~~っても安いじゃないですか!
どうして????だってニューヨークのコーヒーの市況が暴落したんだもん。

「俺達には相場に関してはどうしようもできなかったわ」きっと国際機関の専門家や開発コンサルはそう言いますよ。彼らの仕事は生産技術の伝授であり、それを教えて、レポート書いたらそれでおしまいです。プロジェクト期間が終わればそこでおしまい。金の切れ目は縁の切れ目とばかりに退散しますよ。「俺らは役割はキッチリ果たしました」と言いながら。(もちろん専門家やコンサルの中には熱いハートを持った人が多いので、全員が全員そんな無慈悲に去るわけではありませんが、かといってうまくいくまで自費でその場に居残って、農家の所得が上がるまで一緒に取り組む人もいないでしょう)

でもこの現状って責められないですよね。絶対に成功するまで結果にコミットしてやってください、結果出すまでが仕事です、なんていったら何年かかるか分からないし、いくらかかるかも分からない。つまり、今の援助や開発は、いくら現地の人の声を聴くとかニーズを吸い上げるといっても、結局は資金の出し手やプロジェクトのメンバーにはリスクは超限定的で、出す資金もプロジェクトの期間も決まっていて、その中で出来るだけ努力しますというBest effort型(最大限頑張るけど保証はしないよ、という意味)の仕組みになっているのだと思うわけです。

プロジェクトに期待して参加した農家は落胆。そりゃそうでしょうよ。援助機関が入って、専門家と称する人がやってきて指導して、こうすれば質がよくなる、こうすれば生産性が上がる、と言うものだから、それを信じてやってきたわけです。しかしその結果が、売れない、あるいは売れるけど価格が低すぎる。だったらコーヒーをしないでコメや野菜を栽培していたほうがよかったじゃないか!挙句の果てに、プロジェクトが終わったらもう誰もやってこない、というオチ。

だから今の援助体制や開発コンサルがダメだとかそういうんじゃないんです。もちろんもっと良いスキーム(≒よりoutputではなくoutcomeに重点をおいたアプローチ)にする余地はあると思います。(どういうことかというと、例えば「コーヒー栽培の技術を教える」というプロジェクトがあったとして、その結果(output)として生産性が向上します。ここは専門家や開発コンサルは頑張ってくれます。でも、そもそもそのプロジェクトの狙いは、「生産性の向上」そのものではなく、それがもたらす「収入アップ」であり、「収入アップによる生計の向上」、「子供の教育への支出の増加」、「電気やガス代が払えるようになって暮らしが改善すること」などoutputの結末(outcome)なわけです。当然outputとして生産性が向上しても、生計向上などのoutcomeにつなげるためにはコーヒーの販売価格が一定あるいは上昇しなければいけないわけで、でもそこはコンサルではどうしようもできないんですよね)

それで結局私は何を言いたいのかというと、サプライチェーンを理解していなかったり、価格のメカニズムを知らなかったりする人が援助をしたり途上国に介入(intervention)するのは極めて危険だということ。誰も悪いことをしていない、いやむしろ皆頑張った!でも結局誰もhappyになっていない、そんなのって悲しすぎるじゃないですか!!

では一体だれがサプライチェーンを理解しているのか?誰が価格のメカニズムを知っているのか?

それは企業ですよ。コーヒー屋さんだったら、コーヒーの価格がどこで決まるか誰でも知っている。でも援助機関の人や開発コンサルタントで知っている人ってほとんどいません。なのに栽培に適した土地だからってコーヒー栽培を勧めちゃったりするわけでしょ。それはアカン!

企業ができることって沢山あるんです。意識していないけど、自分たちの常識が実は途上国の課題の解決に役立つことがとてもある!でも企業はその海外の現場にいないから自分がもっているもの、知っていることが役に立つ(=ビジネスになる)ことが分かっていない!!

一方で、開発コンサルタントや各分野の途上国の専門家は知っているけど、企業は知らないことっていうのも沢山ある。要は、どちらが偉い、どちらがすごいとかの議論ではなくて、ビジネスマンは開発コンサルの手法や技術を学べば世界へマーケットが広がるし、開発コンサルタントはビジネスマンがいつも意識するようなサプライチェーンやマーケットの分析をしなければ、いつまでたってもレポート書くだけで現実を変えられない無責任な人で終わってしまうわけです。

ということで、まだまだ書きたいことはあるし、甚だ中途半端ではありますが、ミンダナオの出張報告記はこれでおしまいにします。実際このあと、カカオを使ってこの地の問題をどうブレイクスルーするのかということに関して、とんでもない方法でとんでもないプレゼンがさく裂するわけですが、今はまだ公開できません><すみません。。。

社会課題へのアプローチの仕方や、売り手と買い手のジレンマなど、「ソーシャルビジネス」「途上国ビジネス」として考えられているこれらの問題にDari Kはどう考えどう対処しているのか、このミンダナオの例も含め、説明するにはとっても時間がかかります。また一方的に話してもあまり意味はなく、やっぱり結局は「百聞は一見に如かず ("Seeing is believing"これも試験に出るかもよ!)」なので現地で一緒に見て、考えて、議論するのが一番です。

数学の方程式を覚えてない人が難しい計算問題を解くことは出来ないのと同じように、別に「途上国開発」に式があるわけではないけど、考え方を知らずにその場その場で適切な判断ができるはずがなく、またそもそも問題設定を間違っていたら何の意味も成さないばかりか「百害あって一利なし ("all pain, no gain"または"nothing but harmful"と覚えましょう。ここまできたら英語の先生やね)」です。

だからこそ、Dari Kは今年、通常のカカオ農園ツアーとは別に、ソーシャルビジネスをガッツリ学ぶスタディツアーを企画したのです。なんといってもこのスタディツアー、開発コンサルティング企業のアイシーネット株式会社さんとの共同企画。つまり、ビジネスとしてDari Kの取り組みを学ぶ一方で、ODAなどを手掛ける開発コンサルタントの考えや視点も同時にインプットしてもらえるという企画なのです。

ということで、興味を持たれた方、ミンダナオではどういうスキームを提案したか気になる人、是非Dari Kの本拠地インドネシアのスラウェシ島現地で学ぶ9月開催のスタディツアーにお申込みください!全て包み隠さずお教えします。少しでも自分たちが学んだ教訓を知っていただくことで、世の中に同志を増やしたい、そんな誠実な思いからはじまったツアーのまさに第1回目です。今月末が募集締め切りなので、皆さまのお申し込みをお待ちしております!

「フェアトレードを超える革新的なビジネスモデルを学ぶ新規ビジネスを立案するインドネシア9日間」の案内動画はこちら↓
9月ツアーPV

資料はこちらをダウンロードしてください↓
Darik_Business_Study_Tour

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お申し込み先(HISサイト)

*8月のカカオ農園ツアーは既に20数名のお申し込みをいただいておりまして、こちらも予定より早くお申込みを締め切る場合もございますので、ご検討中の方はなるべくお早めにお申し込みください!