春爛漫・今だけのトリュフ
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dari K to the World
ブログ

When a dream comes true…

ちょうど一年前。
僕はインドネシアはスラウェシ島のカカオ農園にいた。
カタコトのインドネシア語。
しらみつぶしにあたった本やインターネットで得たカカオに関する知識。
インドネシア語の辞書と、そして大きな夢が詰まった(!)バックパックを
背に、日本を発ち、スラウェシ島へ向かったのだった。
カカオには発酵がとてつもなく重要だと身をもって知ったのもその時期。
スラウェシでは、しかしながら、カカオ豆を発酵していないという
現実を目の当たりにしたのもその時期。
あまりにシンプルで、あまりに大きすぎる壁に
途方に暮れたのもその時期。そしてスカイプで横浜や神戸の
税関や植物検疫の担当部署に電話をして、個人で
カカオ豆を輸入することができるか聞いたら
そんな前例はないと言われ、絶望だったのもその時期。
全てを諦めて、バリ島にでも寄って気分転換して
帰国しようとは、それでも、思わなかった。
誰も発酵していない?何それ。
発酵してないならその重要性を農家に説いて、教えて、
発酵できるようにすればいいじゃん。
カカオ豆を個人で輸入するなんて聞いたことがない?
前例のあるなしを聞いてるんじゃないですよ。
どうすれば輸入できるのか、必要な書類と手続きと
ハンコを聞いてるの。
ってそこまで強気だったかと言われれば、全くそんなことはなく
泣きそうになりながら、真っ黒に日焼けしながら、
練乳のたっぷり入ったコピ(コーヒー)をすすり、
村人がみんな驚くウルトラモバイルパソコンで
色んなシミュレーションをし、あーどうしよう、どうしよう
と一日中頭をかきながら過ごしていたのが本当のところ。
そして帰国したのは2月。
折りしも街はバレンタインムード。
カカオの木はおろか、カカオの豆ですらきっと見たことがない
パティシエが、ここぞとばかりにバレンタインという名の
金のなる木の恩恵をあずかろうとする現実。
世界的にカカオの一大産地なのにもかかわらず、
インドネシアのスラウェシ島なんて聞いたこともない
ショコラティエたちが作るチョコレートの数々。
そしてそんなチョコレートたちが素敵なパッケージに
飾られ百貨店で飛ぶように売れる光景。
その時はもう、本当に諦めようと思いました。
世界は変わらない。俺の力じゃどうにもなんない。
それが本心でした。
こんなにしんどいことして、成功するかどうか分からないし、
借金することになるし、もう前の金融の仕事に、
あのストレスは多いけど先の先を読むエキサイティングな世界に
戻ろうか、そんな誘惑が少なからずあったのも事実。
でも、人生一回だし、it's better to regret something you did
than regret something you didn't do(やらずに後悔するなら
やって後悔した方がいい)と思う反面、でもなまじ
経済の勉強をしていたから「機会費用」が頭をかすめ
(失敗して借金を作るだけでなく、もしやらずに普通に
アナリストをしていればその分の給与も昇進の機会もあるはずなので、
そうした機会も損失することになるということ)現実的に
考えれば考えるほどリスク回避をしたくなり。
でも、悩んでる時間がもったいない。
スラウェシの農家の人たちのあの優しさ。
自分の育てたカカオがどこでどうなるかなんて
知らずに一生を捧げるなんて、どこかおかしい。
やっぱりやるしかない、そう決めて、「来年のバレンタインの
参考に」と百貨店でもらったチョコのカタログ。
そして今、あれから1年。
ss-CIMG4959.jpg
(左は去年の大丸のバレンタインカタログ。右は今年のもの)
今年の百貨店のバレンタインのカタログには
「Dari K」のチョコレートがある。