Dari K(ダリケー)

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イギリスのEU離脱をDari Kの理念から考える

やや固いタイトルですが、以前はブログでいろいろ経済のことを自分なりに書いていたと思いだし、ホットなトピックのイギリスのEU離脱について考えたことを少しだけ書いてみようと思います。

イギリスの大学院を出た自分にとって、今回のEU離脱を問う国民投票はあまり遠くの国のことに思えませんでした。もちろん、このグローバル化した現代において、一国の決断は、それが経済政策の変更であれ指導者の交代であれ、世界全体に影響を与えます。それがGDP世界第5位(1位から米国、中国、日本、ドイツ)のイギリスがEUを離脱するとなれば、その影響たるや大きなものであることは想像に難くありません。(ちなみに2015年の1人あたりGDP(ドルベース)では、イギリスは世界第14位で、日本は26位です。GDPの概念や為替レート、統計的に都市国家が大きく出やすいなどツッコミどころはいろいろありますが、それでも一人当たりGDPでみると日本は本当に低いですね。欧州、北米、アジアの小国(シンガ、香港、マカオ)、原油産出国に軒並み負けています)

話を戻して、イギリス国民がEUからの離脱を求める理由で大きなものは、EUに対する拠出金の割にイギリスへのメリットが少ないことや、EU域内では自由に人が移動・労働できるので移民が多くイギリスに入りこみ、イギリス人の雇用機会が奪われていることなどが挙げられます。

たとえば前者では、イギリスやドイツ、フランスなどEUの中でも経済的に大きな国は、その経済規模に応じて資金の拠出をしますが、その集まったお金はギリシャやスペインなど財務的に苦しい国の救済に使われたりしてしまっています。つまり、イギリス人にとっては、自分たちが収めた税金が、自分たちの社会や将来を良くするというのではなく、他の国の、しかも経済政策が失敗していたりする自業自得的な国の債務超過のツケを払わされているということであれば、EUに加盟してこの状況が続くのは腑に落ちないということです。

一方後者では、私も留学時に感じましたが、イギリスは移民が沢山います。EU域内では所得水準の低いブルガリアやルーマニアなどからイギリスに来るだけで、たとえば同じ職業・同じ仕事をしたとしても、イギリスで働いた方が自国で働く給料と比べ3~5倍になることも珍しくありません。EUは域内での自由な移動・居住を認めているため、それを拒むことは原則できず、ゆえにイギリスの雇用機会に対し、当然移民が多く来れば労働力の供給が増えますから、移民に仕事を奪われてしまえば、イギリス国民の失業率は上がります。

イケイケドンドンで経済が急拡大していれば話は別ですが、経済成長が鈍化している現状では、このような不満が出やすいものです。そうした時には、どうしても冷静になれずに、今の停滞やうまく行かない原因を何か外部のせいにしたくなるものです。

たとえば、成績が思うように上がらないと、「周りの子は予備校に行ってるのに、自分の家はお金がなくて予備校に行かせてもらえないから成績が伸びない」と言ってみたり、「あいつが出世してるのは有名大学を出てるからだ」とか。そりゃ予備校に通えば成績が上がる確率は増えるかもしれないけど、成績が上がるには予備校は必須ではなくて自分で頑張って上がる人もいるはずです。同様に、有名大学を出れば出世する可能性は少し上がるかもしれませんが、有名大学を出れば自動的に出世するわけではなく、また出世している人がすべて有名大学出身ということもないはずです。

だから、イギリスの経済成長が停滞したり、失業率が高くなっている原因として、EUに加盟しているからと言う気持ちも分かりますが、そこはもっと冷静に見るべきでしょ、というのが私の個人的な意見です。だって移民が増えているからといって、経済水準の低い国からの移民はイギリス人がやりたがらない清掃員だったり、警備員だったりするわけだし(つまり、移民が来なくてもイギリス人はやらないので、失業率に影響はない)、バリバリの頭脳労働者がイギリスに移民としてくる場合はイギリス人にとって代わられてしまうかもしれないけど、その分その会社は優秀な人材を国外からも調達して成長できるので、イギリス人の失業率は若干上がったとしてもイギリス経済にとってはプラスのはずです。

それよりもEUが持つポテンシャル、理念を理解し、自国だけの成長を願うのではなく、より広範な国のボーダーを超えた繁栄を実現するために、今のEUの制度や課題へのアプローチが良くないのだとしたら、その制度やアプローチを変える努力をすればよく、脱退という強引な選択肢しかなかったのかな、もっと別の方法を取る余地があるんじゃないかな、と思った次第です。

ところで、これをDari Kの理念から解釈するとどうでしょうか?

Dari Kは「カカオを通して世界を変える」をスローガンにしていますが、それではどういう世界にしたいかというと、「努力が認められる世界」なわけです。カカオの価格はニューヨークやロンドンの市場で決まっており、さらにカカオの生産国ごとに国際市況を元にしながらもそれに上乗せしたり(プレミアム)、値下げした(ディスカウント)実質的な流通価格が存在します。

そのような中で、カカオ農家一人一人はどんなに頑張っても、それがカカオ豆の買取価格には反映されることが極めて難しい状況にあります。そこで、頑張って良い質のものを作ったらそれなりの価格で買い取るという至極当たり前のことをする、これだけで彼ら生産者の世界は大きく変わるのです。

この「努力が認められる世界」という観点からイギリスのEU離脱を鑑みると、国民のこの判断も理解できます。自分で頑張って働いて納めた税金が、言葉は悪いですがあまり頑張らず、あくせく働いていない南ヨーロッパの国の人を救うために使われるのではたまったもんじゃない!努力してないのに、うまいところだけ持っていくのは納得いかない、という気持ちもは十分共感できます。

一方で、増大する移民に対しては、移民も頑張って働いているわけなので、「努力が認められる世界」の中では、移民と競争しつつ、イギリス人も頑張らなければいけないと思うわけです。

つまり、EU離脱の要因として挙げられる経済格差に関しては、そりゃ理想論的な要素(EUはパッとできたものではなく何十年という歴史の中で少しずつ理想を具現化したものであるので、自国のことだけを考えずに国を超えた共同体的繁栄を目指すべき)はあるにしろ、私も離脱したくなる理由(経済的に富んだ国がそうでない国を助けなければいけないというEUの仕組み)も理解できますが、後者の移民増加によるイギリス人の雇用機会の減少に関しては、そもそも移民が就く職業とイギリス人の望む職種が同じであるかどうかという点で疑わしいし、労働力の自由な移動は経済を活性化し、努力が認められる良い意味での競争になると考えています。

ただ冒頭にも書いた通り、一国の判断が世界全体に影響を与える時代。遠い欧州の出来事ではなく、私たちも今回のEU離脱の件を通して、問題の本質を理解する訓練をしておかないと(私もまだまだですが)、今後同じようなことが日本で生じた時に、感情論などで誤った意思決定をしかねないと思いました。

ところで私はまたまたインドネシアに来ています。この国はこの国で大きな可能性も課題も抱えています。先日行ったフィリピンも然り。しかも都市ではなく地方に行くと、それがより顕著な気がします。そこには先進国とインドネシアという国としての経済力の差だけではなく、ジャカルタやスラバヤなどの国内の大都市と、スラウェシやパプアのような国内の格差もあるわけですから。

政治も経済も難しいけど、それが独立して存在するわけではなく、一人ひとりを寄せ集めたのが国であり、政治になり、経済になるわけなので、結局大切なのは一人ひとりの考え方になります。その成熟度によって、これから大きなうねりがもたらされることも、思わしくない方向に走ってしまう可能性もあると思うと、我々も今以上に成熟しないといけないと強く感じています。