秋ギフト│食感を楽しむカカオニブアイスクリーム

dari K to the World
ブログ

「フルーツ発酵」について語ります

Dari Kを2011年に創業してもうすぐ10年。

色々活動はしてきたけど、その中でもサプライチェーンの最上流、つまりカカオの生産地インドネシアで最も時間を割き、また創業以来ずっとこだわり続けてきたのが、カカオの「発酵」だ。「発酵」していないがために品質が上がらず、インドネシアのカカオは安く取引されていた。発酵して品質を上げても、それに見合った価格で買い取られない(出口がない)のも問題だった。

だから僕らは「発酵」することで品質向上に挑戦してきた。そしてその発酵して風味がよくなったカカオを高く買うことにした。農家は喜んだ。僕らは菓子職人ではなかったけれど、他では手に入らない品質の良いカカオ豆を手にした。

その素材を用いてチョコレートを作った。衝撃だった。世の中のチョコとは全然味が違った。

世の中のチョコを食べて、カカオ豆を食べると、味の乖離に驚くと思う。でもダリケーのチョコを食べた後に、ダリケーのカカオ豆を食べると、同じだと感じるのだ。チョコのことも、店舗運営も、輸入手続きも、何もかも知らないド素人の僕は、社員とともに、がむしゃらにチョコを作った。

そうしたら創業わずか4年でパリのサロン・デュ・ショコラに出展できるになった。日本の有名百貨店や高級ホテルでもお使いいただくようになった。「発酵」することで、カカオの風味がどれだけ変わるか、僕らの契約カカオ農家と僕は、誰よりも体感してきた。「発酵」って、スゴイ!

でも、ある時、「発酵」はゼロ=イチではない、と考えるようになった。発酵したか、しないか。そんな単純ではない。同じ地域で、同じ農家からカカオを買い取り、自ら発酵してみても、毎回カカオ豆の味や香りが異なる。

そうか・・・。

考えてみれば、日本酒やお味噌、納豆や醤油など、僕らの身の回りには沢山の発酵食品がある。でも、そのほとんどは(全部かな?)室内で作られる。菌がコントロールされている環境。安定した品質のものを作るために、あるいは目指す味を出すために、徹底的に酵母含め菌をコントロールする。

一方でカカオはどうだろう?発酵は間違いなく100%屋外で行われる。文字通りオープンエアだ。収穫されたカカオの実は、割って中の果肉(パルプ)を取り出され、木箱に入れられバナナの葉で覆われる。つまり、木箱やバナナの葉についてる目に見えない酵母の影響を多分に受ける。

また空気中の菌の影響も尋常でないほど受ける。なんなら、カカオの実を割るときに使った木の棒やナタについてる菌の影響も受ける。

だから同じ時に、同じ場所で、同じ農家が、同じ品種のカカオを収穫しても、発酵されたカカオ豆の味は同一ではない。

「発酵すると風味を良くなる。でも風味を均一にするのは難しい」

毎回カカオ豆の風味が変わることに対し、悩みは膨らんでいった。2015年頃だったろうか。

考え抜いて僕が出した結論は・・・

「カカオの発酵をコントロールするのは不可能だ。無菌室でカカオを取り出し、毎回同じ酵母を添加しないかぎり無理。というか、それ以前に、そもそもカカオの果肉(パルプ)の量は、同じカカオの木から採れた実でも、降水量の違いや収穫時期の違いで違う。つまり水分量や糖分が毎回違う。結論:カカオの発酵にかかわるパラメーターが多すぎてコントロールできない。以上」

限界を感じた瞬間だった。「味の安定」を求めようとした自分は打ちのめされた気分だった。

それからしばらく経ったある日。

僕の頭に神様が舞い降りた。カカオの神だったのかもしれない。神はこう言った。

「カカオ豆は果物の種だ。電子部品ではない。まったく同じものなど存在しない。ただでさえ元となるものが異なり、さらに発酵という複雑なプロセスを経たものがカカオ豆だ。世界には70億人の人間がいるけど、誰1人として全く同じ人間がいないように、毎年500万トン生産されるカカオ豆も1粒とてまったく同じカカオ豆はない。それを均一化しようとする方がおかしい。個性ととらえられないか?そして素材、つまりカカオの個性を楽しむのがチョコレートなんじゃないのか?」

そうか!

発酵は風味を安定化させるためのプロセスではなく、素材の個性を、可能性を拓くプロセスなんだ!

そうして僕らは実験を始めた。発酵中にいろいろな酵母やスターターを入れたり、温度管理をしたり、嫌気発酵と好気発酵を入れ替えたり、とにかく色々実験をした。

実験をするためには、日本から出張ベースではダメだ。現地法人(子会社)を立てた。Dari Kの社員をインドネシアに駐在させた。毎日毎日実験できる体制を作った。

その様子は2016年に「ガイアの夜明け」で取り上げられた。TVの影響で色々な相談や引き合いが来た。でも僕らは実験に集中した。発酵は無限の可能性がある。中途半端なものを出して、発酵の可能性をそんなものかと見くびられるのが嫌だったし、何より自分たちで納得いくものを作りたかった。

それから試行錯誤を繰り返しすこと4年。カカオ農園や農園の近くで採れる果物をカカオと一緒に発酵することで、フルーツの香りをまとった「フルーツ発酵」のカカオ豆ができた。そしてようやく、それを使った「フルーツ発酵のチョコ」が出来上がった。

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是非皆さん、カカオの歴史を変えるチョコレートの幕開けを、一緒に味わおうではありませんか!!