原石をダイヤにする方法(3)

| 2019.9.30


前回のエントリーからだいぶ時間があいてしまったが、原石がダイヤになるにはどうしたらよいかについて今回思いを綴ってみようと思う。

ストレートに言えば「とにかく磨く」、この一言に尽きる。石ころがダイヤの輝きを放つには、とにかく磨かなければならない。ではどう磨くのか?それは「意識しなければやらないようなこと、かつ苦手なこと」を意識的にやることだと思う。できるだけやる、とかいうレベルではない。「とにかくやる」のだ。

自分が心地よいことは自然にできるはずだし、何も考えなくてもそうしているはずだ。敢えて苦痛に感じることをやるからこそ、磨かれるというものだ。

私は新卒で入った投資銀行で、死ぬほどエクセルを使った。いきなりマウスを取り上げられ、「エクセルにマウスは不要」と当時は意味が分からないことを先輩から言われ、ひたすらショートカットを覚えさせられた。

早朝から深夜までデスクに座りPC作業をしているのだから、正直なところ休日くらいはPCから離れたかった。エクセルを起動させたくなかった。でも自分に休日はなく、土日も会社に行った。当たり前のように同期も先輩もみんな会社にいる。平日と休日の差は、スーツを着ているかどうかだけだった。

私は学生生活が長かった。学部で4年、交換留学で1年、国内の大学院に1.5年、海外の大学院に1年、世界放浪で0.5年と8年も学生時代を過ごした。だから社会人になり、しかもハードで有名な外資系銀行に入社したことで、他の同期よりも精神的に苦しくなるのが早かった。

かなりつらくなってきて、自分でもテンションが下がってきたと自覚するようになってきたある時、自分のことをよく見てくれていた先輩が私のデスクに来てこう言った。

「吉野、今つらいだろ。毎日毎日、PCで数字をいじって、擦り切れそうか?」

私は嬉しかった。先輩が自分の頑張りを見てくれていて、心配してくれている。そう思った。でもその後に続いた言葉は完全に私の予想を裏切った。

「辛くて擦り切れそうと感じているのだとしたら、それは良いことだ。順調に磨かれてる。輝くために磨かれてる時っていうのはつらいんだよ。つらくないことしてたらいつまでたっても石ころのままだ。原石がダイヤになるには、とてつもなく磨かないといけないんだ。磨かれる過程はつらいよ。痛いよ。でもその過程を経ないでダイヤのように輝けるようになるはずないだろ。今お前はダイヤになる過程だ。磨かれてる。頑張れ!」

その時私は無言で涙ぐんだのを覚えている。「こんなのおかしい。こんなに仕事ばっかりしていて何が楽しいんだ!」そんな風にネガティブに考えるようになっていたはずの自分。しかし、先輩の言葉を聞いて冷静になってみると、確かにそうかもしれないと思い当たる節が少なくないことに気づいた。

3か月前に10時間かけてやっていたことが、その1か月後には5時間でできるようになっていた。そしてさらに1か月経つと3時間でできるようになっていた。自分の時間がなくて、つらくて、嫌になっていたけど、見方を変えればとんでもないスピードでそれまでできなかったことができるようになっていた。

これを読んで、共感する人だけではないと思う。得るものはあっても、失うものもあるのだから、完全に共感されるとは思っていない。それに、他の人もこういうマインドセットを持つべきだとも思っていない。もちろん、これを強いることもない。

ただ、輝いている人は相当痛みを伴う磨かれた経験をしている、というのは想像に難くないと思う。輝いている人、それは経営者でも、スポーツ選手でも、俳優でも、政治家でも誰でもいいけれど、尋常じゃない苦労を、それも一瞬でなくかなりの長期間経てきたはずだ。削られずに今輝いて見える人なんてこの世にいるのだろうか。

かのエジソンでさえ、「私は失敗したことがない。ただ、1万通りのうまく行かない方法を見つけただけだ。」と言って失敗を重ねた。1万回うまくいかない過程がつらくないはずがない。削りに削られたはず。それでも彼は研究を止めなかった。あきらめなかった。そして数々の輝くべき発明に至るのだ。

「エジソン=発明=天才=苦労していない」歴史上の偉人でさえ、決してこんな方程式にはならない。

私が言いたかったのは、「ダイヤのように輝くために、僕らはみんな苦労をいとわず頑張るべきだ」ということではない。そうではなく、「原石がダイヤになるには、その過程で尋常じゃない研磨をされる」という事実だけ。

これは今、とてつもなく悩み、しんどいと感じながらも頑張っている人へのエールとして書いています。今あなたは磨かれている。輝くため、輝きを増すために、避けては通れない道を通っているだと思う。

最後に。ダイヤモンドはその固さゆえに、ダイヤモンドでしか磨けないという。ダイヤを磨くにはダイヤが必要。これが何を意味するのか。考えれば考えるほど深いです。

 

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